長 光(ながみつ)
預かり物の太刀を携え、都へ遣いに出掛けた関東の奉公人。道中大津松本の市を見物していると、見知らぬ男が寄り添って、奉公人の持つ太刀の緒に手を掛けて自分の物だと主張して・・・。
詐欺師が近付き所有権を云い争う演目は、狂言「茶壷」にも見られますが、本曲は太刀に焦点を充てています。備前の名刀《長光》を引き合いに、焼刃・地肌の色合いなど、言葉巧みに主張し合います。
名刀と呼ばれる太刀は、能楽の世界(間狂言)にも登場します。能「土蜘蛛」では伝説の太刀として通称《蜘蛛切丸(膝丸)》、能「小鍛冶」においては三種の神器と呼ばれる《草薙の剣》の謂れが語られます。また同曲で刀工職人として取り上げられている三条ノ小鍛冶《宗近》など、職人の名から取った《正宗》《村正》などは、この《長光》と並び評され今でも有名です。