八幡前(やわたのまえ)

登場人物
男・舅・太郎冠者・教え手
上演時間
約35分

八幡山下に住む有徳人が一人娘に聟を取ろうと考え、一芸に秀でた者を募集すると高札(=掲示板)を揚げます。それを見た男は立候補しようと思い付くも自身無芸なので、日ごろ世話になっている知人のもとを訪ねて教えを乞います。すると《弓の名手》だと名乗って鳥を射る真似ごとをせよ、ただしどうせ当たる筈もなく、射損じた時の言い訳には一首の秀歌(=洒落歌)を詠んで《和歌に達者で心得た者》だと思われよ、と伝授されますが・・・。

《八幡宮》は、大分県宇佐神宮を総本社に全国約四万四千社にものぼるとされる宮社です。これに応じて「八幡前(はちまんまえ)」駅も、洛北の叡山電鉄や和歌山の南海電車をはじめ全国のバス停にも数多存在します。なかでも本曲は洛より南西部に位置する「石清水八幡宮」(京阪電車)を据える八幡山に由来し、《やわたのはちまんさん》で知られる三大八幡宮の一つとなっています。

さて、聟を公募するという演目は「鞍馬聟」「賽の目」などでも登場する一つのテーマです。晩婚世相の今時を反映するかのような、まさに狂言版『婚活』と云えるでしょう。