富士松(ふじまつ)

登場人物
主人・太郎冠者
上演時間
25分

召使い(太郎冠者)が無断で旅に出掛けていたと知った主人は、懲らしめのため自宅を訪ねますが、信心深く富士禅定(富士詣)をしていたと知って赦し、富士山の様子を尋ねながら召使いが手に入れてきた富士松(=唐松の別称)を所望します。太郎冠者は主人に酒を勧めて誤魔化そうとしますが、主人は松を我が物に取り上げようとするため、松を賭け物とした連歌の勝負となり・・・。

信仰の象徴としても聳え立つ富士山には《霊峰富士》の名の如く崇められる聖域でもあって、高山に登って修行し所願成就を祈念する『禅定(ぜんじょう)』と呼ばれる参拝方があります。富士山自体が富士宮市街の総本宮から奥宮(富士山頂)に至る浅間神社の御神体として祀られており、その参詣の広まりと共に今なお多くの参拝者が頂きへとつづく標べに挑みます。
また本曲のように、主人の赦しを得ずに無断で参詣(外出)する《抜け参り》を取り上げた作品に、「竹生島参」(都久夫須麻神社)や「文蔵」(京都見物)があります。