二人袴(ふたりばかま)
舅(義父)との面会《聟入り》を果たすよう子(聟)に勧めた親(実父)ですが、作法や心得について心許無いと先延ばしを提案される始末。そこで親は子の不安を取り除きながら宥めて促しますが、子から舅の家までの同行を求められて・・・。
狂言に於いて《聟入り》とは、婿養子として妻の籍に入る事ではなく、婚礼後初めて妻の実家を訪問する『挨拶儀礼』を指し、聟と名の付く演目も「鶏聟」「懐中聟」「音曲聟」「猿聟」「舟渡聟」等々、聟入りにまつわる類曲も少なからず存在します。当時の風習・慣習を用いた作品となっていて、中には儀礼の作法や行動に何らかの失敗をした故に辱めを受ける、といった風刺を効かせた題材で笑いと教訓を誘います。殊に本曲は、いまだ親離れ・子離れの出来ぬ両者という素地が加わる事によって、現代でも通ずる如くその一端を覗かせます。儀礼を無事に乗り切ろうと苦心する親子が、やがて思いも寄らぬ状況に困惑し巻き込まれてゆく様が見どころです。