鬼継子(おにのままこ)
夫と死別した女は、忘れ形見の幼子を抱いて実家へと帰郷します。道中夕暮れ人通り少ない路へ差し掛かると、運悪くその臭いを嗅ぎつけた鬼と遭遇します。
鬼は偶然襲った女が地獄でも評判の妻と知り、夫の死後の現状を伝えつつ女に好意を持ち、地獄へ連れ帰ろうと脅しますが・・・。
恐ろしい象徴とされる異形な姿の鬼も、幼子のあどけない姿に表情を緩ませ、次第に赤子を宥めつあやしつする人間臭さが、可笑しみを誘う作品です。
鬼が人間の女性に好意を寄せるという演出は、狂言「節分」にも見られ、狂言に於いて恋愛の対象は人間の男女のみならず、鬼の恋慕もその対象となります。一方女性は、世を問わず逞しく強い心の持ち主、まさに『鬼嫁』とも為りましょうか。