素袍落(すおうおとし)

登場人物
召使い・主人・伯父
上演時間
約30分

伊勢参りを思い立った主人は、かねてより参詣希望のあった伯父を誘うため、召使(太郎冠者)を遣いに出します。伯父には生憎先約があって同行は出来ないものの、折角訪ねて来た太郎冠者に対して門出の祝いと酒を振舞い、自分の代参を頼んで引出物の素袍を託します。振舞われるままにすっかり酔いの回った太郎冠者は、やがて支離滅裂な状態となって・・・。

素袍袴の出立ちは中世の正装・礼装を表し、伊勢参拝は全国各地から今も昔も変わらぬ信仰を仰いで、殊に当時遠方の集落では籤引きを用いて地区を代表し、参拝者を決める《伊勢講》《伊勢代参》と呼ばれる風習もありました。伊勢詣という目出度い行事を背景に持つ事から、正月などに上演する祝言曲として取り上げられる事も多い演目です。
また「千鳥」「寝音曲」「棒縛」など酒にまつわるエピソードは、狂言を代表するテーマの一つですが、中でも本曲は、徐々に酩酊していく太郎冠者の演技が重要な見せどころとなっています。

*父母の兄を「伯父」、父母の弟を「叔父」と表記して区別します。