宝の笠(たからのかさ)
《目の前に現奇特のあるお宝》即ち不思議な現象の現れる宝を品評する宝比べが世間では流行っています。主人は召使い(太郎冠者)に、都でそのようなお宝を探し求めてくるよう命じます。
召使いが方々を尋ね歩いていると、都の素っ破(詐欺師)が近づいて「その昔、鎮西八郎為朝が鬼ヶ島〔蓬莱島〕に於いて鬼と勝負して勝ち取った戦利品のうち、不思議な御利益のある《笠》だ」と云って、言葉巧みに売り付けます・・・。
家来の失敗を主眼とした演目で、召使いが素っ破(詐欺師)に偽物を売りつけられるという展開は、狂言「末廣かり」などにも似ており類曲には「宝の槌」があります。
新春を寿ぐような平和な世の中であるがこその一端として、ほのぼの感が得られる作品です。