薩摩守(さつまのかみ)

登場人物
新発意・船頭・茶屋亭主
上演時間
約30分

東国の新発意(しんぼち=若い修行僧)が住吉天王寺へ参詣する途中、一軒の茶屋に立ち寄り休息します。茶代も持たずに一服した新発意に茶屋は道中を案じ、この先にある大河神崎川の渡し舟に乗るには、かなりの船賃を支払わないと乗せてもらえないと告げると・・・。

この演目は《秀句》が一つのテーマとなっています。秀句とは秀逸な俳句でもあり、また巧みな掛け言葉による洒落句でもあります。当時は秀句を好んで嗜む者も多く、狂言の中にも度々起用されています。

また不正乗車(無賃乗車)の事を、かつては「薩摩守」と呼んでいた事を、知る人は多くないでしょう。さて新発意はこの秀句を上手く利用して、無事対岸へ渡り天王寺参拝の本望を遂げられたのでしょうか。行方を左右する船頭との駆け引きが見どころの作品です。

*公演形態によって、新発意をシテ(主役扱い)とする場合と、船頭をシテにする場合とがあります。