髭 櫓(ひげやぐら)
洛中一番の大髭を持つ男が、その髭を見込まれて大嘗会での鉾の大役を担う事になります。晴れの儀式を控えて妻に身嗜みを頼みますが、妻にとっての髭はむさ苦しいばかりの疎ましい象徴。その上衣装を用意する金策もないと断られると・・・。
夫婦の口論から生じる演目は狂言「鎌腹」などにも見受けられますが、本曲は些細な言い争いがやがて大事の騒動に発展してゆく可笑しさを秘めています。それでいて、どの家庭にも起こり得そうな、他人事と笑ってもいられない作品とも云えましょう。
《大嘗会(だいじょうえ)》とは、基は天皇の即位後、天皇自らが収穫した初めての新穀を神々に供える祭事のこと。天皇一代に一度だけ行われるとされ、現代では大嘗祭(だいじょうさい)とも呼び、新嘗祭(にいなめさい)に引き継がれているとも。