ぬけから(ぬけがら〔脱殻〕)
和泉の堺へ遣いを云い付けられた召使(太郎冠者)は、いつも出掛けの《気付け薬》として振舞われる酒を呑み過ぎたため、道端で寝込んでしまいます。酔いを案じて後を追った主人はこの醜態を目の当たりにして、懲らしめのため太郎冠者に鬼の面を被せます。酔いから目覚めた太郎冠者は、己れの異変に気が付いて・・・。
命じられた仕事を遂行しないがための懲罰として、鬼の姿に変身させられたと思い込む奇抜な発想ではありますが、酒に纏わる醜態の罪と罰は今も昔も不変のテーマです。類曲「簸屑」でも取り上げられているように、先人は教訓を今に残し伝えている証とも云えましょうか。